唐十郎の世界観

唐十郎の初期作品『アリババ』、『愛の乞食』の二作品。唐が旗揚げした劇団「状況劇場」によって1966年に『アリババ』が、1970年に『愛の乞食』が初演されました。現実と幻想、現在と過去が溶け合うそれぞれの物語は、叙情的に紡がれる言葉の数々で、人々の中に眠る普遍的なロマンを呼び起こします。通い慣れた街、見慣れた景色が唐のフィルターを通して掘り起こされ、現代に生きる人々に活力と希望を与える作品として蘇ります。
演出を務めるのは、新宿梁山泊主宰の金守珍。唐十郎と蜷川幸雄の両虎を師とし、アンダーグラウンド演劇に真正面から取り組んできた金は、Bunkamuraシアターコクーンで、蜷川幸雄の遺志を継ぎ『ビニールの城』(16年)の演出を手掛け、多くの観客を魅了し見事その使命を果たしました。その後『唐版 風の又三郎』(19年)、『泥人魚』(21年)と、次々と唐の名作を喧騒の野外テントから広壮な劇場空間に甦らせ、アングラの醍醐味の猥雑さと詩情豊かで幻想的な唐の劇世界を美しく昇華させました。そして2023年、野外テントの聖地・花園神社を有する新宿のTHEATER MILANO-Zaで上演した『少女都市からの呼び声』は金らしい爆発的なエネルギーを内包した独創的な演出が記憶に新しく、アングラ演劇のさらなる躍進を予期させる瞬間でもありました。その歩みを止めることなく、今作では唐の初期作品二作を初の全編“関西弁”で連続上演。唐の独特な世界観を関西弁で再解釈することによって、新たな視点で戯曲の力を引き出し、アングラ演劇を次世代へ繋げてゆく契機となるでしょう。さらに6月には金が新宿梁山泊主催のテント公演でも同演目を演出・上演します。

今回、初めて唐十郎さんの作品を観劇しました。推しの壮一帆さんが出演していたのでチケットはスムーズに取れましたが、なかなかの人気でした。アングラ演劇では有名な唐十郎さんの独特な世界観が、今の時代にも通ずるものがあり、戦後80年の今年に演じられた事にも意味があると思いました。
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